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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
「涼一、起きてる?」
その声を聞いて、心臓が飛び出しそうになった。昨日と違って「涼一」と呼ばれるのは、まだどこか不慣れだが、今はどうでもいいことだ。
ドアの外に瑞月がいる。なんで? その理由を考える余裕すらない。なにしろ、当書斎のドアの鍵は以前、物を運び込む時にぶつけて壊してしまっていて、それ以来直していないのだから、入ろうと思えば誰でも入れるのである。
そのせいで、初日の夜には謎の人物の侵入を許し、今だって俺の目の前には松川土埜の姿があるのだった。
「え……あ、あの……」
松川さんは激しく狼狽えていた。言葉を詰まらせて、上手く話せないようだ。さっきのように、もじもじと身をよじるのではなく、小動物のように小刻みに震えていた。きっと俺以上に、焦っていた。
隠れて――!
声に出さず、咄嗟に目で訴えかけていた。なのに、どうしたことだろう。身を隠す場所なら、とりあえず居並んだ書架の間が適切ではないか。
幸い今なら部屋全体の照明は消えていて、点いているのはベッドの脇にある関節照明とデスクに取りつけてあるアームライトだけ。書架の陰で身を潜めていれば、まず見つかることはないだろう。なのに。