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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
大丈夫じゃねーだろ、店の経営状況がっ!
そう思うが今更なので、口には出さなかった。すると、俺が黙り込んだと感じたのか、華火は沈んだ声で言う。
「も、もしかして……明日の映画、やっぱり行けなくなったとか……?」
浦辺華火は真面目でいい子なのだが、ネガティブすぎるのが玉に傷だ。否、そんなことろも謙虚さの裏返しと考えれば美徳なのかもしれないが、彼女の場合やや度を超えている。
「いや、華火――」
「いいんす、別に。私なんかに誘われて、きっとお困りでしたよね。ごめんなさい……」
「――映画は行くって! 電話したのは、別の用事だから!」
俺が電話したのは、彼女をバーベキューに誘うためだった。どうせなら人数が多い方が楽しいだろうということで、ついでにマスターにも声をかけてもらおうと思ったのだが。
「マスターは今夜、麻雀とのことです」
華火の呆れ声が、電波越しに伝わってくる。
「あのオヤジ、またかよ。まあ、いいけど。それで、華火は?」
「あまり遅くならなければ問題はないですが、でも……」
「嫌なのか?」
妹たちが来ていることは、以前に話してある。彼女にしてみれば、俺以外初対面の相手だらけだ。元々あまり社交的なタイプではないし、気が進まないのだろうか。
「いえっ、嫌とかじゃなくて。むしろ、涼一さんから誘われて嬉しい――って、今のは違くてぇ」
「華火?」
「あのぉ……いいんすか、私なんかが行っても?」
「当たり前だろ。じゃあ、待ってるから」
「で、では……バイトが終わったら伺います」
華火の了承を取りつけ、俺は電話を切った。