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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
そんな風におざなりな言葉を口にしながら、互いに決して視線を合わせようとしない。俺の脳裏には昨夜の彼女の姿が、艶めかしい記憶としてリフレインされた。
「ごめんなさい……」
それは、瑞月とキスを交わした、その裏での出来事。俺を口で果てさせた彼女は、謝罪を口にしてさめざめと涙を流していた。
きっと自分でも押さえられない〝自分〟を内に宿して、それを御しきれないでいる。あの涙は、無力感と戸惑い。そうであるように、俺には感じられた。
やはり、セックスは彼女を救わない。そんなことは、彼女自身わかりきっているはずだ。それでも求めずにはいられない、とするのなら。
その慰みに身体を合わせることに、激しく抵抗を覚えはじめていた。彼女とのセックスで得る快感が大きければ大きいほど、後に自分を貶めなければならなくなる。業だ。
なのに三日後――否、もう二日後には彼女と再び――そんな約束を交わしてしまった。
セックス以外の方法で、彼女に内在する不安の塊を取り除く方法はないのか。そんなことを考えながらも、頭の片隅では彼女の乱れた様を夢想する俺に、そんなものが思いつくはずもなかった。
「あの――」
「なに?」
「――昨夜のこと、ですけど」
「!」
いくら二人でいるとはいえ、まさかこんな場所で、彼女の方からその件に触れてこようとは、まったく想定外だった。
「いやっ……それは、もう」
なんと言ったらいいのか、その正解はわからない。だが、少なくとも彼女を責めるようなことはしたくない。涙ながらの「ごめんなさい……」は、もう聞きたくなかった。