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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
しかし、彼女が触れようとしたのは、別の件について。
「あの……瑞月ちゃんと」
「え?」
「すみません、こんなことを聞くのは、どうかなって……でも、どうしても気になってしまって」
「な、なにが……?」
呆然と見やると、彼女も俺をしっかりと見据えた。潤ませた瞳を、俄かに揺れさせる。
「してました、よね? 瑞月ちゃんと、その――キス、を」
毛布の中に隠れ、男の部分に執拗な愛撫を施していた彼女が、あの場面を目撃したわけはない。だが、その時の空気とその後に交わされた言葉から、悟られてしまうのは明白だった。
失念していた。今の俺は、そんな程度のことにすら頭が回らないのだ。妹とキスをした、その兄という構図。傍から見たのなら、それは事件であり奇怪だ。そして、おそらく松川さんは、俺たちが実の兄と妹でないことも承知してないだろう。
だが今、その事実をエクスキューズとして用いるのは、あまりにも浅薄だ。だからといって、まるで弁解しなければ、あまりに酷い誤解を受けることになる。俺ばかりではなく、瑞月も……。
なんとか、言葉を絞りだそうとした、その時だった。
「あ、あれは――」
「い、いいんです」
松川さんは俺の言葉をかき消した上で、更にこんな風に言う。
「やっぱり、いいんです。すみません……私には、関係のないことでした」
「関係ない、って?」
「だってお兄さんとは、ここにいる間だけの……私を慰めてくださるのも、私の過去に同情したからで……それ以上のことは、なにも……」
胸の辺りを押さえ、消え入りそうな言葉でそこまで話してから、彼女はまるで自分に言い聞かせるように小さく頷く。そして再び俺を見やって、今度ははっきりとした口調で言った。
「大丈夫です。私、決して誰にも言いませんから。もちろん、私とお兄さんのことも秘密にします。ですから二日後も、その後も――どうか私を、抱いてください」
「だけど、それじゃあ……」
「どの道、ここにいる間、だけですから」