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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
瑞月の素っ気ない様子に、狼狽えたのは華火である。かわいそうに。彼女の性格を考えれば、それも当然なのだった。
「涼一さん……私、やっぱり帰ります」
ほとんど涙目で、華火はすがるように言う。
「なんでだよ。来たばかりだろ」
「だって妹さん、なんか怒ってますよぉ……」
「初対面なのに、怒る理由がない」
「だ、だけど……絶対、私のこと気にいってないって、そういうオーラ出てますもん」
気が気でないといった華火を前に、俺はため息を吐き軽く肩を叩く。
「気にしなくてもいいって。あれは別に、華火のせいじゃねーから。たぶん」
「え?」
その時、暗がりに夏輝さんの明るい声が響いた。
「華火ちゃーん! 一緒に食べよ! ホラ、お肉お肉―!」
その手に掲げた金串には、いい感じに焼けた肉と野菜が刺さっている。
「ほら、たくさん食べてこい」
「だけど……」
「大丈夫だよ。それに華火には日ごろの感謝もあるから、こんな時くらい楽しんでもらいたいんだ。店の方、任せっきりで悪いな」
「いいえっ、そんなこと――全っ然、かまいませんから」
華火は照れながら言うと、手招きする夏輝さんたちの方に加わっていった。
その様子を微笑ましく見送った後で、改めて一人輪から外れているその姿を確認。瑞月は欅の木の下でアウトドアチェアに座ると、つまらなそうに缶酎ハイをあおっていた。