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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
瑞月はそっぽを向き、明らかに不満がありそうな口ぶりで話す。
「――なんだか随分、馴れ馴れしいじゃん。あの子と」
「あの子?」
聞き返すと。
「別に、どうでもいいんだけど。なんか……華火とか、名前で呼んじゃってるし」
瑞月は文句を言うと、残りの酎ハイを一気に飲んだ。
なんだ、そんなことか。やや安心したせいだろうか。俺はつい口を滑らせてしまう。
「かれこれ半年も一緒にバイトしてるし、普通だよ。華火の場合、どっちかっていうと、妹みたいなところがあって――」
そこまで口にしたところで、自分でもヤバいと感じ言葉を止めた。
そんな俺の顔を、瑞月は不快そうに睨みつけてくる。
「はあ? いもうとぉ?」
「いやっ……その」
「それは、よかったですねぇ。他にも妹ができちゃってぇ」
ジトっとした視線に、俺は焦った。
「バ、バカ。今のは単なる言葉の綾で、だからといってお前がどーとかって話じゃ――」
「いいよ、別に。けど、だったら――」
「瑞月?」
瑞月は椅子から立つと、二歩ほど進んだところから、俺を振り返った。
「私は妹じゃなくても、かまわないでしょう?」
先ほどまでの怒り口調ではない。少しはにかんだように瑞月は言って、他の四人の輪に混ざっていった。
その背を見送りながら、俺の脳裏には昨日のキスの光景が蘇ってくる。頭を振り、咄嗟にそれをかき消した。
「……」
俺は呆然と立ち尽くし、改めて一連の会話を反芻する。今、特に気にかかるのは二点。俺に対する瑞月の気持ちの変化と、別荘を去るかもしれないという高坂さんについて。
しかし、いつまでもそうして難しい顔をしているわけにもいかない。赤々とした炭火は次々に肉、野菜、きのこ、ソーセージ、魚介等を焼き上げ、香ばしい香りを風に乗せた。それに鼻孔を刺激され、俺も肉に食らいつき酒をあおった。
皆がそれぞれに、ほどほど腹を満たしたころ。それまで〝焼き役〟に徹してくれていた高坂さんがコンロを離れ欅の木の方に行くと、さっき瑞月が座っていたアウトドアチェアにどっと腰を下ろした。
「お疲れ」
俺は声をかけ、手にしていた缶ビールを渡す。
「ありがと」