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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
「……」
彼女は勝手口のドアノブを掴んだまま、ドアの前の一段高くなったポーチの上に立ち尽くしている。こちらに背を向けると、ひっそりと押し黙っていた。それまでの太陽のような明るい彼女を鑑みれば、らしくない態度だと考える方が自然だ。
やはり、そうだったか。俺は内心で確信を強めた。
その結論に至った経緯は、なんのことはない単なる消去法だ。だから言い当てたところで、なにひとつ誇れるものではない。そもそも酒に酔って前後不覚になり、自らが招いた不祥事だ。
それでも赤裸々に白状すれば、まず松川土埜でないことは間違いなかった。根拠は実際に身体を合わせた感触というか、もっと言ってしまえば、あんなに胸がでかくなかっただろ、という実に俗物的な根拠だった。それに、いくら彼女がああいう性質でも、最初の壁を破るのには少なからず抵抗があったはず。既に俺に対して壁を破っていたのなら、SNSを通じ行きずりの相手をわざわざ現地で探す理由もなかっただろう。
高坂文水については最初こそ疑いを向けたが、何度か言葉を交わす内に彼女の性格からしてあり得ないと思うようになった。面と向かって誘惑するなどと言ってのける彼女が、あんな不意打ちのような真似をするとは思えない。仮に関係をもっていたのなら、その事実を秘めたまま「帰る」なんて、殊勝なことを言い出すのも妙だった。