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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
状況は以前の時と酷似していた。俺が背を向き、夏輝さんが、その、しているという点において、まったく同じだ。
「…………」
こうなってしまった以上は、俺から行動を起こすことは難しい。というか、どう対応すべきなのか、知ってる人がいたらレクチャーしてほしいくらいだ。少なくとも、俺の左右の靴の間を流れていく、この水流が止まるまでは、黙って待つ以外にないのである。
そして、永遠に続くのかと錯覚したその時間(実際には二十秒くらいなのか?)も終わりの気配を感じさせ、件の水流は緩やかに収まっていった。
「……あ、あのぅ」
そのタイミングで、ようやく声を発してみるが、とても人に話しかける音量ではなかった。それに応えるより先に聴こえてきたのは、彼女がすすり泣く音だった。
ぐすっ……ぐすん。
さっき〝以前と酷似した状況〟と述べたが、当然ながら決定的に違っている点がある。それは言うまでもなく、この場所がトイレでない、というあまりに大きすぎる一点なのだ。
すなわち、前の時は笑って済ませた強メンタルな彼女とはいえ、このような反応になってしまうのも、致し方ないことだと思われた。
今、俺のすぐ背後に佇む夏輝さんは、失禁した直後なのである。
「な、夏輝さん――」
とはいえ、そのまま泣かしておいては、あまりにも忍びないのだ。なにか良いフォローはないものかと考えた挙句、俺から提案したのは次のようなものだった。
「――と、とりあえず、松川さんを呼んでこようか。他のみんなにはわからないように、事情は話しておくから」
こんな時、なにかを手伝ってあげるにしても、少なくとも異性よりは同性の方が適してるはずだ。その点で一番仲良しの松川さんになら、手を借りやすいのではと考えた。
「……」