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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
勝手口の先にある洗い場を指して、そこまで移動するように促したのだが。
「暗いとこ、一人じゃ無理ぃ! あと、動くと気持ち悪いし!」
ああ、もう! いい加減、いら立ちが募り、俺は彼女に強く命じた。
「じゃあ、そこでいいから、とにかく濡れたものを全部脱いで! わかった?」
こくん、と頷いた彼女をその場に残し、俺は建物を回り込むと正面の玄関に向かう。夏輝さんがあの場にいたままだと、勝手口から入れないのだ。
他の連中が楽しそうにしてるのを横目に、目立たないように別荘に入ろうとすると。
「あの、お兄さん」
死角になった位置からの声に、思わず飛び上がりそうになった。玄関の脇に立っていたのは、松川さんだ。
「ま、松川さん……なに?」
「あ、いえ……お兄さんと木葉ちゃんが見当たらなかったので、どうしたのかなって」
そう聞かれた俺は、頭をフル回転して言い訳を絞り出した。
「ちょっと急に小説のアイディアが思いついて、一刻も早く書き留めておきたいんだ。こんな場合、後回しにすると忘れちゃうんだよね」
これは経験に基づくことで、あながち出鱈目ではない。もちろん今は、アイディアなど振ってきてはないが。
「ああ、それと――夏輝さんは少し飲みすぎたとかで、少し休むからって」
「え? 木葉ちゃん、大丈夫かなぁ」
「ううん、全然平気そうだったから、すぐに戻ると思うよ」
様子を見に来られたら、その時点でアウトだが……。
「……そうですか。わかりました」
微妙な間は気になったが、どうやら納得してくれたらしい。
松川さんをやり過ごし玄関から中に入ると、ホッと胸を撫で下ろすのだが。
大変なのは、まだまだこれからだろう。