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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
「ヨシ……」
気合を込めるように言うと、一歩一歩階段を上りはじめる。万が一にも落とさないように、とても慎重に時間をかけて階段を中ほどまで昇った時だった。
「……ごめんなさい」
彼女が耳元にささやきかけた。
「大学生にもなって、おしっこを漏らす女の世話なんて、最悪ですよね」
「別に、そんな風には……」
「それなのに、こんなにくっついて……に……匂いませんか?」
「い、いや、気にならないけど……」
実際はほんのりと香るものを覚えないでもないが、できる限り意識に留めないように心がけた。それは自分のためではなく、彼女のために。
大丈夫だから気にしないで。そんな風に言いかけた時。彼女が先に口を開いた。
「だけど――いけないのは、お兄さんなんですよ」
「……?」
一体、どういう意味だ? いつもとは異なる静かなテンションで語りかけた彼女に、激しい違和感を覚えた。
こちらの体力が限界に近かったこともあり、彼女の顔を見ることも、なにかを聞き返す余裕もなかった。俺はとりあえず階段を昇り切ることを優先し、そしてなんとかバスルームまで夏輝さんを運び込んだ。
バスタブにお湯が七割がた溜まっているのを確認し、シャワーに切り替えると、傍らに立つ夏輝さんの方を見る。
「じゃあ、後はその……」
腰にタオルを巻いたまま、もじもじと居心地の悪そうな彼女だったが、ここに至りようやく照れたような笑顔を見せた。
「エヘヘ……大変、ご迷惑をおかけしちゃいまして」
「い、いいけど」
「ついでと言ってはなんですが、後で部屋から着替えの入ったバッグを持ってきていただいてもいいでしょうか?」
「え、ああ……まあ」
「ありがとうございます。右のベッドの脇に、ピンクのトートバッグが置いてあるかと」
「わかった」