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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で


 肩甲骨の辺りを撫でつけた右手と、腰の丸みを確かめた左手。それらを彼女からゆっくりと引き剥がすと、俺は懇願するように言った。

「だめっ! 暗いの怖い!」

 だが彼女はそう言って、更にギュウッと俺の身体に自らの裸体を密着させた。

「イヤイヤ、電気消したのお前だろっ!」

 再三にわたり呑み込み続けてきたツッコミだが、この時ばかりは堪らずに口に出していた。当然ながら、これを口にする権利がこちらにはあるはず。

 仮にも妹の友達に対して「お前」とは勢い余った感じだが、流石に今の彼女の行動は意味不明すぎた。確かに暗所恐怖症の気があることは承知している。しかし、今回のケースは明らかに故意だ。

「とにかく、これでお終い。電気つけるぞ」

 しがみつく彼女に構わず、俺はドアの方に進む。照明のスイッチのあるドアの脇の辺りを目指して、暗闇の中に手を伸ばした。

 裸で抱きつかれているにも関わらず、変に惑わされていないのは、今はいら立ちの方が大きいからだろう。否、はっきりと怒りを覚えていると言ってもいい。

 微かではあるが、今も外からは瑞月たちの話し声が聴こえている。皆に気づかれたくないというから、俺もそれなりに協力をしたはずだ。

 にも拘わらず、このタイミングでの色仕掛けは悪趣味を通り越している。

「あれ……くそ」

 伸ばした右手が、なかなかドアのある壁に行き当たらない。夏輝さんに強く抱きつかれたままでは、やはり身動きが取りにくかった。

「夏輝さん、いい加減に離れてくれないと、本気で怒るよ」

「……」

「夏輝さん!」

 いら立ちのまま強く言うと、同時に彼女の両肩に手を置く。だが即座に、彼女を突き放すことはできなかった。

「……?」

 さっきまで火照っていた素肌が、今では嘘のように冷ややかだ。そして彼女自身もまるで凍えたように、身体をぶるぶると震わせはじめている。

「だ……大丈夫?」

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