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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
「あの、電球換えるから、とりあえず一度出てくれないかな」
「そうしたいんですけど……用を足そうと、もう座った後だから……動けないんです」
「それは、どうして?」
「私、おトイレを限界まで我慢するクセがあって……今、立ったら……たぶん、出ちゃう」
そんな悪癖、さっさと直せよ! 頭に浮かんだツッコみを、ぐっと飲み込んだ。代わりに、ため息をつく。
「向こうで待ってる。済んだら、また呼んでね」
「ダメ、行かないで! 一人にしちゃ、イヤ!」
「だったら、一体どうしろと?」
「カギはかけてませんから、入ってください」
「えっ、それはマズいって――」
「お願いします。怖すぎて……なんか、気分が悪くなって……」
「な、夏輝さん――!」
本気で具合の悪そうな声に、思わずドアを開け中へ入ってしまった。
「入ったら、ドアを閉めてください」
「だけど――」
「いいから、早く。お願いします」
「わ、わかった」
ドアを開けていれば、少なくとも廊下のからの光は若干差し込むのだが、それはそれで見られるのが恥ずかしいと感じたのだろうか。
理解に苦しむが、先ほどまでとあまりにも違う声と態度に、逆らい難い雰囲気を感じて、気づけば彼女の言う通りにドアを閉ざしていた。
狭く真っ暗な空間は、夏輝木葉と俺の二人きり。否、本来なら二人というのが、あり得ないのだけど……。
「お兄さん、いますか?」
「あ、ああ」
「アハ、やっぱり同じ真っ暗でも、誰かがいると安心しますね」
持ち前の明るさが、少しは戻ってきたようだ。
「待ってて、今、換えの電球を――」
と、俺は便座の右側にある棚を、手探りで探る。
その時、夏輝さんが、ぼそっと呟いた。
「――その誰かが、信用に足る人ならば」
「夏輝さん、今なんて?」
「アハハ! いえいえ。お兄さんのことは、もちろん信用していますよ」
「あ、うん……ありがとう」