この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
なんだ? 只々、元気で明るい子だと思っていた。その彼女が一瞬だけ、なにやら深い闇を感じさせたような……。
「ああっ!」
「なっ、なに!? 今度はどうした?」
突然の大声に、飛び上がるくらい驚きながら聞くと。
「少し安心したら、急に……もう、我慢できないよぉ」
「はあ……?」
「お兄さん、後ろ向いて! 早く!」
「は、はい!」
「耳を塞いで!」
「はい!」
「ホントに塞いだ?」
「うん」
「もうっ、塞いでないじゃん!」
「ご、ごめん。今度はちゃんと――」
「んんっ――ダメェ! お願い! 聴かないで聴かないで聴かないで――ん、んっ……」
その刹那、夏輝さんに背中のシャツ裾を、きゅっと掴まれた。その手がプルプルと震えだしたのがわかり、妙にリアルだと感じる。
「……は、ああぁ」
――!
結果として俺は、便器を叩く水の音を、しっかりと聴いた。音が途切れるまでを、随分長い時間だと感じる。
更にそこからトイレットペーパーを引き出す音。それを切る音。それで拭く音。衣擦れの音を、続けて聴く。
「お兄さん、レバーは?」
「ああ……右側の、上のところに」
「あ、コレか」
打って変わって淡々として、用を足し終えた夏輝さんはレバーを引き、水を流した。その音が響く個室の中。
俺の背後。すぐ後ろから、ささやきかけられた。
「全部、聴いてたでしょう?」
「や……あの」
思わず言葉を詰まらせた俺の背中に頭をくっつけ、夏輝木葉は悪戯っぽく言うのである。
「お兄さんの、スケベ」
その一言に、心臓が跳ねた。