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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第5章 楽しい一夜の裏側で
「小説を書いていた割には、なぁんか、汗びっしょりだけど?」
引き続き瑞月の指摘を受け、ようやく引きかけた汗がまた全身に滲んだ。さっきまでの汗は、あの脱衣場の熱気に当てられたせいだが、今度は間違いなく冷や汗だった。
「いやっ、それは――」
言い訳をしようとすると、思わぬところから助け船が出る。
「アイディアは、ちゃんと書き留められましたか?」
「あ、うん……。忘れる前に残しておかないと、泡のように消えてしまうからね。酒が入った時なんかは、特に」
「フフフ。そんな話を聞くと、本物の小説の先生みたいですね」
「いや……そう言われると、お恥ずかしい限りだけど」
会話を振ってくれたのは、松川土埜だった。
「あ、それはそうと、木葉ちゃんは平気そうでしたか?」
「えっと……どうかな? 自分の部屋に、戻ってるみたいだけど……」
「じゃあ、私、様子を見てきます」
「そう、だね……お願いできる?」
「はい」
松川さんは返事をすると、別荘の中へ入って行った。一瞬、視線を合わせた時に、控えめな微笑を浮かべて小さく頷いて見せたのは「ちゃんと、フォローしときましたからね」と、そう言われた気がした。