この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
なんだ、なんだ、なんなんだよ。それの連続。そりゃあ、大変な一日になることは、ある程度は覚悟していたにせよ、予測しようもないことの連発にはメンタルが削られる。
もう、今日はいいだろう。ほどよく酒に酔っていることもあり、ベッドの安らぎが恋しくなりはじめていた。
それに、しても……。
俺は、さっきまで夏輝木葉といたトイレを振り返ると、首を傾げた。夏輝さんが用を足した後、一人留まり改めて電球を換えようとしたのだけど、切れたはずの電球を取り外そうとすると、既に随分と緩んでいることに気がついた。
試しに電球を一八〇度ほど締め込むと、トイレの個室には光が煌々と灯った。よく考えればそのはずで、前回交換したのは今年の冬のこと。それも寿命の長いLED電球にしたから、半年程度で切れるはずはなかった。
じゃあ、なぜ電気が消えていたのか。夏輝さんが、電球を故意に緩めた? いや、あの子は只でさえ暗所が苦手だという。自分でそんなことをする動機など、まったく見当もつかない。
トイレでは彼女の意外とも思える一面を垣間見たが、少なくとも俺をからかって楽しむような性悪とは思えなかった。そうなると――
「なによ?」
「いや、別に……」
リビングに戻ったところで、瑞月に睨まれ、すごすごと元居た場所に戻った。夏輝さんの前にトイレに行ったのは確か瑞月だったが、まさかそんな悪戯をするわけがないだろう。元々取り付けが甘く、徐々に緩んでいたと考える方が、まだ妥当か。
「お兄さん、すいませんでした」
夏輝さんが俺の方に手を合わせ、彼女にしては控えめな声で言った。暗闇の中では(いろんな意味で)ドキリとさせられたが、こうして顔を合わせていると、本当に一緒にいたのが彼女だったのかと不思議に思えてしまう。
「いいよ。それより、気分は平気?」
「はい! おかげさまで、ばっちりです!」
夏輝さんはシャキッと胸を張り、敬礼のポーズを取った。どうやら、心配は無用らしいが。