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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
「待てよ。今夜は、お前を帰らせるわけにはいかないんだ」
「は?」
振り返りざまに無垢な眼差しで見つめられて、自分の言い回しが誤解を招く恐れを有していることに気がつく。
「いやっ、別に帰さないといっても――」
と、その時。華火が手に提げていたバッグから、着信音が鳴り響いた。その音色を聴いて、華火の顔色が一気に青ざめる。
「ヤ、ヤバッ……」
「家の人からか?」
「は、はい。たぶん、お父さんからです。ああ、どうしよう。全然、言い訳が思いつかない……。しまったな。先にメッセージだけでもしておけば……」
華火は困り顔で、おろおろとしている。それだけでも、きっと厳格な「お父さん」であろうことが窺えた。
「華火。とりあえず出ろ」
「え?」
「正直に話して、困ったら俺と代わればいい。お前がなにも悪くないことは、ちゃんと伝えるから」
「だ、だけど……」
「今夜のことは俺の責任だ。いいから、早く出ろ」
「わ、わかりました……」
華火はバッグからスマホを取り出し、恐々としながら父親との通話に応じていた。