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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき


「いえっ、なんでも……。やっぱり、これで帰ります。原付を置いていくわけにもいかないので……」

「それなら、俺が後で店まで乗っていくって。どうせ、今夜はまた会うんだから、それでいいだろ?」

 今日は華火のバイト後に、二人で映画に行く約束になっている。彼女から観たいと俺を誘ったはずなのに、なぜか華火は表情を曇らせた。

「それだって、別に無理につき合わなくても……」

「華火、どうしたんだよ?」

「別に、どうもしません。ただ、私なんて……」

「……?」

 華火は、なにを気に病んでいるのだろう。昨夜のことで、彼女に落ち度があったわけではないのに。

 どこか憂いたような、その横顔を眺めていた時だ。

「じゃあ、こうしようか」

 俺の背後で話を聞いていた高坂さんが、そう言って会話に割って入ってくる。

 その数分後のこと。少し朝靄のかかった涼やかな林道に、俺は車を走らせていた。隣の助手席には、遠慮がちに肩を竦ませて座る華火の姿がある。

 ミラーを覗くと、車の後ろには原付が続いて来る。華火のヘルメットを被り運転しているのは、高坂文水。華火の代わりに運転すると、彼女が言い出したのだ。

「車の方はまだペーパーだけど、コッチなら任せて」

 それはそれで不安だったけど、早朝で車もほとんど走ってないので、安全運転を心がければ問題はないだろう。高校時代に乗っていたというだけあって、落ち着いて乗っているようだ。

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