この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
「いえっ、なんでも……。やっぱり、これで帰ります。原付を置いていくわけにもいかないので……」
「それなら、俺が後で店まで乗っていくって。どうせ、今夜はまた会うんだから、それでいいだろ?」
今日は華火のバイト後に、二人で映画に行く約束になっている。彼女から観たいと俺を誘ったはずなのに、なぜか華火は表情を曇らせた。
「それだって、別に無理につき合わなくても……」
「華火、どうしたんだよ?」
「別に、どうもしません。ただ、私なんて……」
「……?」
華火は、なにを気に病んでいるのだろう。昨夜のことで、彼女に落ち度があったわけではないのに。
どこか憂いたような、その横顔を眺めていた時だ。
「じゃあ、こうしようか」
俺の背後で話を聞いていた高坂さんが、そう言って会話に割って入ってくる。
その数分後のこと。少し朝靄のかかった涼やかな林道に、俺は車を走らせていた。隣の助手席には、遠慮がちに肩を竦ませて座る華火の姿がある。
ミラーを覗くと、車の後ろには原付が続いて来る。華火のヘルメットを被り運転しているのは、高坂文水。華火の代わりに運転すると、彼女が言い出したのだ。
「車の方はまだペーパーだけど、コッチなら任せて」
それはそれで不安だったけど、早朝で車もほとんど走ってないので、安全運転を心がければ問題はないだろう。高校時代に乗っていたというだけあって、落ち着いて乗っているようだ。