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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
俺は思わず、その顔を睨みつけた。
「事情があったんだろ。だったら堂々としてればいい。そうしてくれないと、俺みたいに環境に甘えた人間は、情けなくて自虐ネタも言えなくなるから」
「フフ、ありがと」
高坂さんは化粧気のない顔で、爽やかに笑う。
「とにかく、そんなわけでさ。素直で可愛い華火ちゃんには、こっちが勝手にお節介したくなっただけ。だから、私に気兼ねする必要はない――でもさ」
「ん?」
「裏表がないだけに、内なる想いも隠し切れてないよね」
高坂さんは前を眺めたまま、淡々と話した。
「華火の……内なる想い?」
「わからない?」
微笑を浮かべた口元に、すぐに聞き返される。
「……」
そりゃあ、殊に酔った後の華火の行為と言動、それと比して醒めた後の態度を妙だと感じないわけではなかった。だけど、だからといって……。
「昨日、寝る前に聞いたんだけどさ。今夜、華火ちゃんとデートなんだって?」
「いやっ、映画に誘われただけで、別にデートってわけじゃ――」
「どっちでも、いいけど」
俺の言葉を遮ると、高坂さんはいつになく厳しい口調で言う。
「それなりに覚悟しておかないと、大変なことになるよ」
「こ、高坂さん……?」
視線を向けると、スッピンでありながらも艶めかしい唇から、ふっとため息が零れた。
「昨日、あんなアクシデントがなければ、こんな心配は無用だったでしょうけど」
アクシデント? そう聞いて、酒に酔った華火に抱きつかれたことが、ふと頭に浮かんだ。
「ま、これも単なるお節介。でもさ、あの子が傷つくところは、あまり想像したくないから」
高坂文水は、そこで話を切り上げていた。
「……」
俺が、華火を傷つける?
彼女の言葉の意図するところを、俺はまだ正しく理解できていなかったのかもしれない。