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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき


「それ、俺の……」

 唖然とする俺をよそに、サンドイッチを呑み込み、マスターは言う。

「これから女と出かけようって時に、こんなもの食ってんじゃねーよ」

「俺、昼も食ってなくて……この後、映画だし」

「映画といったら、ポップコーン! ――だろ?」

「は、はあ……?」

 顔を近づけ威圧的にそんなことを言われても、こちらとしては戸惑うばかりだった。マスターは一体、俺のどこが気に入らないのだろう。

 この店でバイトしている身として、マスターが変わり者であることは十分に承知している。それでも、俺に対してこんなに絡むことは稀だ。

 不思議に思っていると、マスターからこんな風に聞かれる。

「涼一、お前んとこ、女子大生だらけで酒池肉林だってなぁ」

「いや、酒池肉林って、別に――」

「その上、今夜は華火とデートか? いいご身分じゃねーか」

「! だから、デートとかじゃなくて――」

 いろいろと誤解が多いようだと、ちゃんと弁明しようとした時だった。カチャッとドアが開き、奥から現れた華火を前にして俺は思わず目を見張る。

 日頃、店では清潔感のある白いシャツとシンプルな黒のパンツ、そしてブラウンのエプロンといった装い。俺の中で華火は、そのイメージである。

 それが今は、ネイビーの花柄ワンピースの短い裾を恥ずかしそうに片手で抑えながら、俯き加減に言った。

「あの……お待たせ、しました」

「ああ、うん……じゃあ、もう行くか」

 そんな華火を連れて、店を出ようとした時。

「おい」

 マスターは背後から、俺に耳打ちした。

「いいか。お前がどう思うかじゃねーぞ。華火がどう思っているのか、それをよく考えろ。じゃねーと」

「じゃねーと、なんすか?」

「ハッ、しるかよ。あとは自分で考えろ」

「……?」

 マスターといい、高坂文水といい。一体、俺になにを警告しようとしているのか。

 わけもわからないままに俺は華火と、とりあえず映画に赴くのであるが、果たして――。

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