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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
「す、すみませんでした。わ、私……完全に入り込んでたみたいで」
「わかってる」
「勝手に手を握ってきて……その上、手汗とか……最悪っすね」
「そんなの気にするな。というか、むしろ華火のお陰で映画が楽しめたぞ」
何気にそう言った俺に、華火はなぜか恨めしそうに横目を向ける。
「どうして、そんな風に……なんでもないような、顔をしていられるんですか?」
「華火?」
「いいえ、なっ、なんでもないっす。あ、まだ続きが――」
エンドロールの後には、若干のエピローグ的なパートが残されていた。ラストで互いの想いを通じ合わせた主人公とヒロインのその後の幸福を暗示させる、柔らかな雰囲気の一場面だった。
それは二人に想いを寄せた者にほど、大きな感動をもたらすであろう、確かに、そんな内容だったと思う。
だから華火が涙を流したことに、なんの違和感もないはず、なのに。
「華火……?」
ポロポロと止めどなく涙を流す横顔に、なぜか俺は只ならぬ想いを予感する。
華火の中で、それがどんな涙だったのか。
俺はそれを、量れずにいた。
「涼一さん」
「ん……どうした?」
華火は尚も涙を零しながら、言う。
「この後、もう少しだけ……私につき合っていただいても、いいですか?」
今まで見たことのない、華火の横顔を見つめながら。
「あ、ああ……もちろん、かまわないけど」
そう答えた俺は、まだ、華火の真意に目を向けようとはしていなかった。