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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
「……」
俺は踏み込んでしまった、と感じている。不用意だ。でも、華火は俺が踏み込まなくても、言いたいことを言うつもりだったようだ。
華火は焦れたように、声を上げる。
「ああ、もうっ!」
「華火……?」
「すっ、すみません。私って、こんなにもバレバレ。わかってます。私の気持ちなんて、もうダダ洩れになってるの。でも、どうせバレバレなら、自分で言うしかないって……そう、思うから」
華火はすっかり赤面した顔を、また俺の方に真っ直ぐに向ける。
「だから、この続きを」
「え?」
「言わせてもらっても……いいっすか?」
華火は既に潤ませた双眸で仰ぎながら、俺に聞いた。スカートの裾を握った手は、小さく震えている。いじらしくもあり可憐でもあるその姿を前に、俺はどう答えれば正解だったのだろう。
否、ここに至っては、もう聞き届けるしかない。
「……あ、ああ」
だから、俺が誤ったとすれば、その後のこと――。
「映画の最中に手を握ったのも、酔っぱらって抱きついて甘えたのだって、そう」
華火は話しながら、一歩前に足を踏み出す。
「もっともっと前から、借りた難しい本を一生懸命読んだのだって、一緒に映画に行こうとムビチケを用意したのだって」
興奮したように話し、また続けて一歩近づく。
「涼一さんがバイトするようになってから、ずっとウキウキでドキドキでした。一緒にバイト入ってる日の前の日は、楽しみで眠れなくなったりして。アハハ、変ですよね? なにも、あるわけないのに」
「か、華火……」
ほとんど、ぶつかりそうなくらい前のめりな華火の肩を、思わず両手で掴み止める。
それでも尚、俺の顔を一身に見つめて、華火は言うのだった。
「好きです、涼一さん。私は涼一さんが、ずっと大好きでした!」
言った途端、華火の瞳から涙が零れる。