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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
その表情を眺めながら、俺の中に生じた想いは微妙に変貌に遂げる。華火を傷つけたくないのではなくて、おそらくは華火に嫌われたくないといったものに。
華火の望み通りにしない理由は、俺の中でめきめきと形を成しはじめている。それを十分に意識しながら、俺は再び臆面もなくダサいセリフを連ねた。
「やっぱり華火の気持ちは、俺なんかにはもったいないと思うんだ。華火ならその内に、もっと相応しい相手が必ず現れる。だから――」
「――だから?」
つい今まで可愛らしく微笑んでいた表情が、一瞬で違うものに変わったような気がした。
「涼一さんは結局、私がまだ子供だから駄目だと言いたいんですか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「だったら、たとえば……昨日、私を部屋に泊めてくださった高坂さん、でしたっけ? あの綺麗な方から告白されたら、涼一さんは同じように言いますか? 言わないでしょう?」
「なっ、なんで高坂さんが出てくるんだよ!」
「だから、たとえ話です! 別に妹さん以外、あとのお二人だっていいんです。それぞれタイプが違って、とても可愛い方たちでしたけど、その場合ならどうなんですか?」
「華火、一体なにを言っているかわからないよ。彼女たちは、別荘に遊びに来てる客というだけで――」
大幅に逸れていく話の軌道をなんとか修正しようとするが、華火は既に聞く耳を持たなかった。
「だって、不公平じゃないですか! 歳が二つか三つ違うだけで、私だけ子供扱いなんて、そんなの差別です!」
「だから、そんなつもりはないって」
「じゃあ、ちゃんと言ってください。そうでないと、私、悪あがきしますよ」
「悪あがき?」
「いえ、それは……」
華火は一旦そこで口を噤み、興奮を鎮めたようだった。