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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
華火は魂をどこかに置き忘れたように呆然として、ぱちくりと瞬く。その後で、俺になにかを問いかけるように見つめた。
「あれ……? あの、なんて……?」
「あ、いや……」
「なにを、しちゃったって言いました? わ、私……今?」
「えっと……オナニー? とか、聞こえたけど。いや、俺の聞き間違いじゃなければ」
「うわあっ!」
恥辱に耐えかねたように、華火は絶望にも似た響きで声を上げた。
ベンチに座ったまま背を向けると、頭を抱えるようにして小さく身を屈める。そして、そのままの体勢で「ああ、もう最悪。死ねばいいのに死ねばいいのに。いっそ殺してほしい」といったネガティブな言葉を、念仏のようにブツブツと呟き続けた。
ふう、と。俺は小さく息をつく。
華火にしてみれば、この上もなく恥ずかしいのだろう。それに反して、俺の中に生じる想いは、そこはかとなく爽やかなものである。さっきの赤裸々な言動にさえ、華火らしさを感じたのだ。
彼女の性格がネガティブなのは、実直で自分に厳しいから。対して他人のことを悪く言ったところなんて、一度だって見たことがない。優しくて周囲に気遣いができる割に、自分のことだとに空回りすることも度々あった。今だって、そうだ。
「りょ、涼一さん……」
「なんだ?」