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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
呻くような声を耳にして、交差点の街路樹のところで、蹲っている華火の小さな背中に気づいた。
「華火」
「み、見ないでください!」
「?」
「最悪です、私……最低で、最悪。だから……うわぁ、うわあぁぁん!」
通りすがる人目も憚らず、華火は大きな声を上げ、子供のように泣きはじめた。
「……」
その姿を傍らで見守る俺は、声をかけることも寄り添うこともできない。
立ち竦みながら、自分の中で少しだけ時間を巻き戻してみる。
「悪いけど、華火とはつき合えない。これからもバイト仲間として、よろしく頼むな」
華火の告白の後で、そんな風に答えた場合を想像した。
やはりダサくて、どこかで聞いたようなセリフだった。そうだとしても、まだそう答える方が誠実でいられただろう。たぶん、華火を「悪あがき」に走らせることにもならずに……。
たとえ後で泣くことになったとしても、それは今の涙とは違ったはず。俺の中途半端な態度のせいで、華火をより深く傷つけてしまった。
後悔してみても、今更どうしようもない。
「……」
俺は呆然と立ち尽くして、華火が泣き止むのを待っていた。
それ以外に、どうすることもできない。少なくとも、今は……。