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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
ぐす……ぐすん……ぐずっ。
助手席から聴こえてくるのは、鼻をすする音だった。
「……」
それを耳にしながら、俺は前を向いてハンドルを握っている。
映画館からの帰り道、国道は渋滞もなくスムーズに流れていた。華火は店に原付を置いてあるので、一度そこまで戻らなければならない。
一向に泣き止みはしないが、これでも随分と落ち着いてきた方。公園の外で泣き崩れてから、車に乗るように言い聞かせるまでには、かなりの労力を要した。「顔を見ないで!」とか「ほっといていいですから!」とか、そんな言葉を涙声で繰り返されるばかりだった。
当然ながら置き去りにできるはずもない。だが実際のところ泣かせてしまった張本人が、彼女に気の利いた慰めの言葉などかけられるわけもなくて。暫く近くで様子を眺めながら、泣き疲れた頃を見計らい、些か強引に車まで引っ張って行くのが精一杯だった。
その際も、駄々をこねたようにイヤイヤをして何度も手を振り払われた。本当に子どものような泣き姿だと感じさせた。それだけにベンチで身を寄せ合うようにして、ダイレクトに胸を弄った時の光景が、不思議なほど嘘くさく思えるのだ。
華火は、やはり相当な背伸びをしていたのだろう。それだけに躓き倒れた時、本来なら負わなくてもいい傷を、その汚れのない心に負ってしまったのだ。
言うまでもなく、すべて俺のせいで間違いない。