この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
華火が告白に踏み切ったのは、昨夜の飲酒の一件が引き金になったということ。あの時、俺に抱きついたり甘えたりしたことで、自分の気持ちが「バレバレになった」と思い込んだようだった。
俺からしてみれば想定外である。高坂さんやマスターから警鐘を鳴らされていたくせに、まるで心の準備ができていなかった。
日ごろ接する中で華火から滲み出ていた好意に、今更いくつかの場面が思い当たった気がする。否、俺は既に一定以上のものを感じながら、その部分に目を向けようとしてこなかったのか。
華火との良好な関係を変えたくないというのは、その意味でも方便ではない。だから、俺の過ちは、その立場を貫徹しなかったことにこそあるのだ。
告白を受けた時、今の自分が彼女の気持ちに向き合う資格がないと判断しながらも、心の奥底で「惜しい」という気持ちが生じていたのではないか。
その上で俺は、体裁を繕うような言葉を並べている。それは、表面上は「つき合えない」としながらも、華火の一途な気持ちを、この先もずっと自分に向かわせていたかったから――?
この夏が過ぎ瑞月たちが去った後で、いつか華火の気持ちに癒される時が訪れるような気がして、その可能性を捨て去りたくなかったのかもしれない。
当然ながら計算立てて行動や言動に表したつもりこそないが、一方でこれらの仮定を否定することもできそうにない。俺の中に曖昧な部分が見えたからこそ、華火は「悪あがき」に出ることになってしまったのだから。
最低で最悪なのは、間違いなく俺の方だった。
「な、なあ……華火……?」
赤信号で停車した際、車に乗ってからはじめて華火の方を向き、おそるおそると声をかけてみるけど。
ぐす……すん……ぐずず。
華火は俯いたまま、尚も静かに泣き続けている。結局はそれ以上声をかけることができないまま、車は俺たちのバイト先である喫茶店に到着した。