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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第6章 いじらしい悪あがき
「華火!」
店の敷地に停車するや否や、華火は車から降りて逃げるように駆け出した。すぐに追いかけようと、続いて車を降りた時である。
「よう、帰ったのか」
店のドアが開き、顔を出したのはマスターだった。
時刻は既に夜の十時近く。普段ならとっくに閉まっている時間にもかかわらず、店の中からは灯りが漏れ出している。だけど、客がいる様子はなかった。
マスターは華火に手招きをしながら、言った。
「華火、ちょっと寄ってけ。帰る前に、コーヒーでも飲んでいくといいぞ」
「……」
華火は無言のまま、柔らかな灯りに誘われるように店の中に入っていく。
そして、マスターは即座にドアを閉めようとした。
「ま、待ってください!」
慌ててドアノブを掴むと、マスターは通せんぼするように俺の前に立ちはだかる。そして、冷めた目を向けた。
「涼一、お前は帰れ」
「え?」
「当たり前だ、コノヤロー。案の定、泣かせてきやがって」
そうして再度、マスターは容赦なくドアを閉ざそうとする。
俺は食らいつくようにして、どうしても気になったことを訊ねた。
「な……なんで、わかったんですか?」
「ん?」
「だって今、案の定って……それと行く前にも、よく考えろみたいなことを」
マスターは俺をじろりと睨みつけた後で、大きなため息を吐いた。