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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
確かに昔から、親父の瑞月に対する溺愛ぶりは並ではなかった。しかし、真実を知る前なら、男親とはそういうものなのだと納得することもできたのかもしれない。
だけど、瑞月と血の繋がりがないと知ってからは、やはり親父の瑞月に対する愛情の深さは、実の息子の俺の目に異常なものとして映った。血の繋がりがないからこそ、より深く愛そうとか、そういう理解ですら範疇にない。
もしかしたら親父は、瑞月を永遠に自分の所有物にしていたいのではないか。そんな最悪な仮定を強ち否定しきれないほどに、親父の愛(それ)は禍々しく思えた。
だからこそ、俺は引け目を感じている。堆い高層マンションの頂に、俺は瑞月を置き去りにしてきたのだ。
「その心配には、涼一さんも含まれているのではなくて?」
「俺も……?」
一瞬、五月女さんの言葉の意味がわからなかった。あの親父が、今更俺の心配をするだろうか。否、そんなわけがない。とすると、その意味するところは――。
俺は今日一番の険しい顔を五月女さんに向ける、
「俺が、瑞月を?」
「……」
五月女さんはわかりやすく視線を逸らすと少し間を置き、それまでの会話の流れを一切無視して、空々しくこんなことを話した。
「――ともかく。瑞月ちゃんがいかに安全(ぶじ)に楽しく夏休みを謳歌しているのか。そんなことを、私はお父様に報告しなければならないわ」
話を有耶無耶にされたことを面白くなく感じながら、俺はその先を聞く。
「だから?」
「滞在予定はあと一週間よね。とりあえず涼一さんには、瑞月ちゃんたち四人が残りの日々を有意義に過ごすため、スケジュールを組んでほしいの」
「は? やだよ、そんな面倒なこと。それに、俺だって予定が――」
「駄目! 今日みたいに、瑞月ちゃんをほっといて他の女の子と遊んでたなんて報告したら、涼一さんはこの別荘から追い出されてしまうわね。それでもいい?」