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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
まあ、夏輝さんもじきに戻ってくるだろうから、そんなに緊張することもないだろう。それに個々と向き合うというなら、むしろこの方が好都合のはずだ。
「さっき下で会ったと思うけど、あの人――五月女さんから、今後の予定を決めるように言われてさ」
「ああ、とても綺麗な方ですね。そう言えば瑞月ちゃんが前に、高校時代にお兄さんのお世話をしていた人だと言ってましたけど?」
「え、うん……その、親父の秘書をしてた関係でね」
と、その部分を深くツッコまれても困るので、話を進める。
「と、とにかく。松川さんも、なにか希望があるようなら遠慮なく言ってほしいんだ。行きたい場所とか、なにがしたいとか」
「私の、したいこと……?」
松川さんはそう言うと、眼鏡のレンズの奥の瞳で宙を見つめる。彼女を象徴する、印象的な漆黒の眼差しだ。
それを俺の方に向け直して、ぽつりと言う。
「それなら、もう……お兄さんには、伝えてありますから」
「え?」
驚いて見返した俺の手を握り、それを、ふくよかな自分の胸に引き寄せるようにして、彼女は言った。
「三日後は、もう明日ですよ」
そうだった。俺はその約束を彼女と交わしている。明日の晩、俺は彼女とまた――。
「……」
吸い込まれそうな深遠な瞳を前にして、俺はごくりと喉を鳴らす。