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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
「……」
そんなやり取りを黙って見ていた瑞月が、床の上にぺたんと女の子座りをすると、自分の前に置かれたグラスを手にした。股の間にグラスとは反対の手を置いているけど、ミニスカートの中が見えそうに思え、咄嗟に視線を上に上げた。
妹と目が合う。
「無理するなって。高坂さんたちみたいに、酒に強くないんだから」
それは俺自身のことも含めて言ったつもりだったが、この時の瑞月には明らかに逆効果だったみたいだ。こちらを、きっと睨みつけてから――。
「あ」
――瑞月は、一気にグラスを傾けた。そうして一同が見守る中、グラスを開け、それをトンと音を立てテーブルの上に置いた。
「お……おかわり」
ぐっと胸を詰まらせて絞り出したような言葉には、明らかな無理が滲み出ていた。だが、さっきみたいに諭そうとしても、俺の言うことは聞かないだろう。いや、そもそも俺が、この場の火種になっているのか。
「あのさ……俺、明日バイトなんだ。そんなわけで、そろそろ寝たいかなって」
なにか言いたそうに、こちらを見据えた瑞月の代わり、夏輝さんに聞かれた。
「お兄さん、バイトをしてるんですかぁ?」
「うん、まあ。みんなが来てる間は、できるだけ入れないつもりだけど、明日は断れなくて」
「なんのバイト? 朝、早いの?」
と、高坂さんに聞かれ、俺は思わず頭をかく。
「古風な喫茶店。明日は……昼から、だったかな」
「だったら、時間は余裕じゃん」
「そう、だね……」
こういう時、咄嗟に嘘がつけない性格が災いする。どうやら、逃がしてはもらえないらしい。