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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に


「でも、意外です。瑞月ちゃんから、お兄さんは作家修行をしているって、そう聞いていましたので」

 松川さんに言われる。やっぱり聞いているよな、と思いつつ、とてもバツが悪い気がした。世間一般には、そんなモラトリアムはあり得ない。あの親父の息子という境遇だから、そんな甘えが許されているのだ。

 バイトをはじめたのだって、そういった葛藤があったから、だけど……。

「なんで、ヒッ……バイトなんてしてるのよ」

 瑞月に聞かれた。お前、しゃっくりしてるけど、平気か? 兄として心配しながらも、とりあえず答えた。

「なんでって、生活費くらいは自分で――」

「五月女(さつきめ)さんから、ヒッ……お金、たくさん貰ってるくせに」

「五月女さんて誰?」

 夏輝さんに聞かれ、瑞月はこう答えた。

「すっごい綺麗な大人の女の人で、ヒッ……高校時代は一軒家で同棲して、お兄ちゃんのいろんなお世話をしてた、ヒッ……謎の美女」

「ど、同棲……?」

「いろんな、お世話ぁ?」

「フフ、謎の美女だって」

 一気に色めき立つ一同を前に、思わず頭を抱えた。瑞月は思わせぶりなワードを並べているが、肝心な情報はなに一つとして伝えてはくれていないのだ。

 内心、ようやく「お兄ちゃん」と呼ばれた喜びを噛みしめたいところだが、まずは否定するのが先である。

「親父の秘書をしてた人だよ! 一人暮らしがはじめてだったから、たまに様子をみに来てくれただけで、同棲なんかしてない! そういったわけで、謎でもなんでもないからな!」

 一気に言い放ってみたものの、むきになってしまったことから、余計に変に思われてしまったのかも。五月女さんについては、確かにそれですべてではなかった。

 そんな想いを誤魔化すように、俺も目の前のワインを口に。高級ワインは単なるアルコールとして、胃にどろりとした熱をもたらす。瞬間、意識が朦朧として、視界も狭くなった。

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