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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
狭い空間の中では、相手の微かな吐息が聴こえてくる。
「……」
俺が今いる場所は暗闇の個室、すなわちトイレである。そして、その中で二人きりなっているのが、なにかと(特に下方面で)お騒がせの夏輝木葉だ。こんな状況が最早、彼女とワンセットのようにすら感じられてしまう。
否、待て。今回は明らかにおかしい。こんな状況が一週間の間に、何度も訪れてたまるかという思いもさることながら、不可抗力だと納得したわけではなくても、それまでは少なくとも最低限、経緯と呼べるものが存在していたはず。
だが今回に限っては、話している途中で彼女が一方的に俺をトイレに引き込んでいる。この場は狼狽えるより先に、まず彼女に対して不平を言うべきだろう。
「夏輝さん、いい加減にしてくれないかな」
「あ、いえ……ち、違うんです」
彼女にしては弱々しい声音。でも、ここはちゃんと言い聞かせるべきだ。
「夏輝さんとは、ちゃんと話さなければいけないと思っているのに。こんなことがある度に、なんだか誤魔化された気分になるんだ」
最初の晩のことといい、「やっと会えた」という昨夜の思わせぶりな言動といい、彼女には問い質すべき事柄が残されていた。
「で、ですから……落ち着ける場所で、こうして二人になって」
「だから! そもそもトイレは一人で――」
苛立ちから、思わず声を荒げかけた時だ。