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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
「お、お兄さん」
「は、はい……?」
「デートしてくれたら、私……全部、お話ししますよ」
「話す?」
こくりと、彼女は頷く。
すなわちそれは、初日に俺のベッドに潜り込み行為に及んだ動機も含め〝全部〟ということだろう。
そんな風に考えを巡らせる間にも、彼女の腹痛の波は確実に押し寄せていたようだ。
「あのぉ……お兄さん。できればっ、早く」
「お腹、そんなに痛いの?」
彼女は尚も俺の手首を掴んだまま、苦しそうに話した。
「昨日、あんなとこ見られちゃったけど……流石に、こっちはぁ……ぁん。音とか匂いとか、うっ……流石に恥ずかしすぎて、死んじゃうかもぉ」
「それなら、その手を放してくれないと」
夏輝さんは息も絶え絶えに、幾度も頭を振る。
「私とのっ、デートの約束がっ、先ぃ……んんっ!」
そのわけのわからない執念に根負けし、俺は仕方なく答えた。
「わかったよ。じゃあ三日後で。それでいいだろ」
そう瞬間、手首を掴んでいた手がぱっと離れた。そして――
「ああっ、もう限界っ!」
「わっ! もう少しだけ! 今、出るから!」
バタン! 俺が個室を飛び出し、ドアを閉ざすのと同時だった。
「んんんんっ……はぁっ、ぁああぁ……!」
ジャー!
彼女のうめき声と共に、勢いよく水が流れる音が響く。
俺は慌ててトイレの前から離れると、廊下に両手をついてへたり込んでいた。
「まったく……一体、なんだったんだ?」
またしても夏輝木葉の〝奇行〟に振り回されたことについては、今は考えても仕方ないとしても。
図らずも三人と交わされたデートの約束に関しては、決して軽くない頭痛を禁じえない。