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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
この瞬間、言葉の中に落胆の色が滲んでいたとしたら、自分のことを迷わず侮蔑すべきである。
「それとも、涼一さんのベッドで休ませてくれる?」
そんなことだから、五月女さんにからかう隙を与えてしまうのだ。
「……」
「うふふ、じょーだん」
無言で睨みつけた俺を、なだめすかすように五月女さんは言う。俺とこの女《ひと》との関係は一生このままなのだろう。今更ながら痛感する。
プイっと顔を背け、俺は瑞月の寝泊りする和室へと向かう。これ以上、五月女さんに絡んでみても、子供扱いを受けて不快な想いをするだけだった。しかしながら――
「はあ……」
瑞月の部屋を前にすれば、それはそれで別の憂鬱な気分が顔を出す。こんな風に、ため息も零れるというもの。
既に話した二階の三人からは、どこへとか、なにをとか、そういった要望をほとんど聞かせてもらっていない。辛うじて高坂さんから「美術館」というワードを頂戴した程度だ。
それ以上に問題なのは三者から、それぞれデートの約束を取りつけられてしまっていること。もちろん瑞月に、それを話せるわけがない……。
とはいえ、こうして襖の前でため息を量産していても状況は好転しないのは自明の理。ならば考えは纏まらなくとも、自らのアドリブにかけて突撃する他はない。すごすごリビングに戻れば、また五月女さんからからかわれるのがオチだ。