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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
「なあ、瑞月。ちょっとだけ、いいか?」
外から呼びかけるが反応がなかった。しかし再度、音量を上げて呼びかけようとした時。スッと襖が滑り、僅かに開いた隙間から、瑞月がじろっと片目だけを覗かせた。
「なに?」
「あ、えっと……少し話を」
「なんの?」
「まあ、大した事じゃないんだけど、とりあえず中に入れてくれよ」
「なんで?」
「いや……」
襖の隙間から瑞月にじっと冷めた目を向けられ、思わず頭を掻く。そんな俺の様子を観察した上で、瑞月は呆れたように言う。
「なにか言われたんでしょ。五月女さん(あの人)に」
「というか、例によって親父が余計な気を回したらしくてさ」
それを聞くと、瑞月はウンザリといった風に大きく息をついた。襖が開かれ、部屋の中へ進む。
「涼一は、知ってる?」
「なにを?」
「まあ、知るわけないか」
「だから、なにを?」
「お父さんとお母さん、ここ最近、顔も会わせてないって」
「ふーん、そうなのか。またなにか、親父が新規事業でも始めたとか?」
親父は新しいことに没頭すると、一気に家庭を顧みなくなるような人間だ。数か月くらい平気で家を空けることも珍しくはないが。
「最近は赤字の事業が増えて、いくらお父さんでもそうそう無茶なことはしないよ。だから、そういう意味じゃなくて」
「じゃあ?」
「単純に不仲ってこと」
「まさか」