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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
その初日を経て、二日目に高坂文水、そして三日目には夏輝木葉という連戦。この両名にも、こちらからの想いとあちらからの思惑が交錯する、なんとも複雑な関係が築き上げられつつあった。
もしかしたら、松川土埜並に難しい対処が必要になる場面もあるかもしれないが、今はそれを紐解く心のゆとりがない。
それだけに最後の瑞月に「無事に」辿り着くという道のりは、途方もなく遠く感じられた。もちろん「ご褒美」とやらに、期待を寄せるつもりは毛頭ないが……。
そんなことを思慮しつつ、リビングの方に戻ってみると。
「あれ、もう行くの?」
五月女さんはソファーから立ち上がり、レザーのショルダーバッグを肩にかけた。
「ええ。スケジュール調整の方は、もう済んだようだから」
微笑を浮かべてそう言われ、俺は大きく息をついた。
「スケジュールなんて……最初から、どうでもよかったみたいだね。やっぱり」
「いいえ、そんなことないわ。詳細は今夜中にメールで報せてもらうから。帰ったらお父様に報告するというのは、嘘ではないのよ」
ああ、面倒だ。辟易するが、それで文句を口にすることは控える。他に聞きたいことがあるからだ。
外に停めてあるトルマリンレッドのプジョーまで送りながら、何気なく切り出していく。
「ねえ、五月女さんは知ってる?」
「なぁに?」
運転席のドアを開くと、そこに手をかけながら俺の方に向き直った。改めて視線を合わせられると、少しだけ気まずく感じてしまうのは、俺の中に雑念があるせいか。