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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
「瑞月のこと……せっかくの一人暮らしなのに、随分と窮屈な状況にあるらしいけど」
「心配?」
「そりゃあ、あんな顔されたら」
ついさっき、涙で瞳を潤ませた瑞月の顔が浮かぶ。
「その心配は、お兄さんとして?」
「当たり前だろ。それ以外に、なにが――!?」
物理的に、言葉を止められた。五月女さんの紅い唇によって――。
五秒ほどのキスを終えてから、彼女は何事もなかったように言った。
「――瑞月ちゃんは、助けを求めたいのね。きっと」
「え……?」
「それも、お兄さんではない――涼一さんに」
「…………」
いろんな意味で、言葉をすぐに返すことができなかった。
「瑞月ちゃんに厳しい監視の目が向けられるのは、あのお父様なら必然ね。私が直接、その状況を知り得ているわけではないけれど」
「そっ、そんなことを、いつまで続けるつもりなんだよ!」
「さあ? そればかりは私にも、なんとも言えない。だけど――」
「だけど?」
聞き返すが、言動が明快な五月女さんにしては珍しく言い淀んだ。
「……いいえ、憶測は控えましょう」
それから彼女らしい微笑を携え、話題を変えた。
「とにかく、今日は来てよかった。涼一さんの元気そうな顔が見れて、なんだかホッとしたわ」
「どこを切り取れば元気そうに映るのか、それが謎だけど」
「ウフフ、ほら。そんな言い方も含めて、相変わらずじゃない」
「それは、どーも」
「あとは別荘(ココ)のホストとして、彼女たちも楽しませなくちゃね」
「そういう役目は、俺には向いてないよ」
「本当?」
「まあ……それなりには、やってみるけどさ」
曖昧な答になるのも、今は仕方がなかった。