この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い


 明日からの日程を考えれば、四人が四人とも笑顔になれる|筋書き《シナリオ》は、たとえ天才作家でも書くのに難儀することだろう。俺が地獄に落ちるシナリオなら、それこそ造作もないが……。

 もちろん、それは彼女たちが俺になにかを期待していた場合であり、それが皆無というのなら話は別だ。

「彼女たちにとって、楽しい夏になるといいけど。やっぱり、私としては――」

 五月女さんは運転席に身体を滑り込ませた後で、こう続けた。

「できれば瑞月ちゃんにとって、そうなることを祈ってる」

 瑞月にとって……?

 俺は瑞月から、なにを求められているのか。ご褒美というワード、そして五月女さんが言い淀んだこと。更には親父から強いられたことを合わせ見れば、その答えは形を成しているようにも思う。

 だが、それで本当に瑞月が幸せになれるのか。それ以上に、今の俺が踏み込めるのか、その点がまるで未知数だ。

 いや、あまりにも飛躍しすぎる。俺は妄想にも似た独りよがりな思考を、そこで打ち切った。

 プジョーにエンジンがかかり、運転席のウインドウが開く。相手から別れの挨拶を言われるより先に、俺はスルーされていた件を訊ねていた。

「ねえ……なんでキスしたの?」

「親愛の情」

 五月女さんは、事も無げにそう答えた。

「それを表すためにする文化は、この国にはないと思うけどね」

 こちらが睨みつけると。

「じゃあ、一緒に来る?」

 五月女さんは、助手席を指して言った。

「まだ、からかう気」

「そうでも、ないけど」

「……」

 じっと見つめ合った。そして、俺が続けた五秒間の無言を待った上で。

「じゃあ、ね」

 五月女さんは手を振り、車を走らせていた。そのテールランプを見送りながら。

「なんなんだよ……ホント」

 ため息交じりにそう呟くのが、今は精一杯だった。

/879ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ