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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
五月女さんの車を見送った後、俺は一人ぶらぶらと別荘の周囲を歩いて回った。特に意味はない。小説に行き詰まった時などは、よくこうして散歩に出ることがある。でも、今は小説のことは頭になかった。
「じゃあ、一緒に来る?」
五月女さんの言葉が、俺の中でリフレインされた。
意味がないというのは嘘。その言葉で、昔に抱いた感情が沸き上がりそうになり、そんな自分を戒めたかった。もっと正直に言えば、鎮めたかったのだろう。
足の向くままに歩いていると、ひそやかな小川へ辿りつく。四人を迎えた初日、酔った瑞月を追いかけて、やって来た場所だ。
その時、岩の上で丸めた瑞月の背中を思い浮かべ、俺は独り言を呟く。
「行くわけないだろ」
正直、プジョーの助手席に乗り込もうとする、自分はいた。明日からの四日の予定も、管理人という立場も投げやってしまいたくなった。
でも、それは只の衝動である。あの頃ならともかく、今の俺にその選択肢があってはいけない。衝動のままの行動を許容してきた、甘え切った自分。それと決別したくて、こんな場所で一年を過ごしてきたはずだ。
「だけど、ズルいよな」
行かない俺に対して失望するでもなく、誘ったことを冗談めかすこともしない。自らの真意を消し去る五月女さんは、やはり大人だ。話していると、自然と背伸びしている自分に気づかされてしまう。