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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
五月女さんにメールを送信しながら、ふっと息をつく。
「ふう……実にくだらないことに、貴重な時間を費やしてしまった」
時刻を確認して、既に日付が変わっていることに辟易。そう言えば、明日は何時にでかければいいのか。
つい作成したばかりのスケジュールを確認しようとした自分を「バーカ」と、嘲笑った。それからデスクを離れ、伸びをした時だ。ふと壁にかけてある姿見の方に歩き、何気なく自分の顔を映してみる。
「うわっ……!」
紅い唇は、五月女さんとのキスの余韻だった。
「ここで会ったのが私でよかったね」
不機嫌に俺の顔を眺めた、高坂文水の真意を理解し、俺は思わず頭を抱える。
「俺って……どうして、こうなるんだよ?」
そう呟いた刹那、一日の疲れが一気に全身に押し寄せてきた。俺はベッドの上に、うつ伏せに倒れ込む。
頭の中では、明日からデートする四人の顔がグルグルと回っている。だけど、すぐにそんな自分を戒めた。
「バカヤロウ……だから、お前は最低なんだ」
そうして改めて思い返したのは、浦辺華火の涙。俺は華火を傷つけてしまった。それなのに、もう違うことで頭を一杯にしているなんて……。
「酒池肉林の別荘に帰れ。お前には、そっちの方がお似合いだ」
マスターの言葉が、心の変な部分に突き刺さっている。
届かなくて、やるせない気持ち。それなら、俺自身がよく知っているはずだ。今日、否、もう昨日となった、あの華火の気持ちにだって、もっと寄り添えたのではないか。
「なんで……キスを?」
指で唇に触れる。でも、五月女さんの気持ちを探ろうとしても、なにも見えてくるものはない。「親愛の情」と、五月女さんが口にした言葉が、更に俺を惑わせるだけ。
そして、裏腹に脳裏に浮かぶものは、今よりずっと青臭い頃の自分の姿だった。今は思い出したくないと感じながらも、華火の涙からリンクするように、あの頃の感情が呼び覚まされてしまう。
それは四年前のこと。高校入学を期に家を出た俺は、五月女日名子という大人の女性に出会っていた。