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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
五月女さんは、俺と顔を合わせて食卓を囲むことはせずに、傍らに立つと給仕に徹した。黒のビジネススーツにエプロンという姿にも、どこか気高さを残している。
そうして食事の後片付けと洗濯や掃除、浴室の準備を整えると、「お困りのことは?」「必要なものは?」などと、お決まりのように訪ね、俺が頭を振ると「では、また明日参ります」と一礼して、家を後にするのだった。
異様だと思いながらも、俺は流されるようにそんな日々を送った。土台、金満な日常にどろどろと甘えて育ってきた歪なボンボンに、一人暮らしの不自由と自由の中に身を投じる覚悟なんて、備わってなかったのだろう。
形上、親父の手から離れたことだけに満足すると、五月女日名子という存在に次第に骨抜きにされた――なんて、だから元から骨なんてないってのに。
学校では相変わらず浮いた存在だ。中学時代(親父の息子であること)を知る人間と離れ、大きく環境を変えたつもりではいたけど、社会性を培ってこなかった俺に友人の作り方なんてわかるはずもなかった。
その上、朝夕を美女の駆る外車で送迎されるとあれば、妙な噂が先行し次第に奇異な目を向けられるのも無理からぬところである。
そんな異常な日常の中で、健全な精神が養われるわけもなく。満たされるようで、なにも満たされない日々を繰り返す中で、俺の中に焦りといら立ちが募っていった。
そうなれば徐々に肥大する負の感情が向かう先を、俺は一つしか持たない。ある日の晩、給仕として傍らに立つ五月女さんに、こんなことを訪ねた。