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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
この場に、大きな誤解が生じているのは確かなこと。だが、瑞月の言葉の意味を正しく補おうとすれば、多くの事情を話さなければならなくなる。そして、仮にすべてを話したところで、過去に俺が瑞月にしたことを正当化することはできない。
あれは、完全に俺が悪かった。当時、心がすさんでいて、自分ではどうしようもなかった感情を、瑞月にぶつけてしまったのだから……。
瑞月は俯いたまま、さめざめと泣く。他の三人は(おそらく)非難の意を含む眼差しを、俺の方に向けていた。
「えっと……」
そして、なんの準備もなく、俺は迂闊に口を開いてしまった。当然、続くべき言葉を持たない。
これを俺と瑞月の問題だと開き直ることができれば、他人による余計な詮索をシャットアウトすることは造作もないことだ。他人を寄せ付けず、あるいは逃れて、こんな別荘にこもっているような人間なのだから。「ほっといてくれ」と鉄のガードを築いて、それで終わりにできるはずだ。
だけど今は、それをしたくなかった。三人に誤解を受けることが、たぶん、俺は嫌だった。
「……キスを、したんだ。瑞月と……子供のころ、だけど」
言った瞬間から、後ろめたかった。おどけて冗談っぽく伝えようとして、それができなかったわけだけど。そうしていたら、もっと最低な気分だったに違いない。
「あ、瑞月」
立ち上がった瑞月が、ふらふらとおぼつかない足取りで玄関の方へ。バタンとドアが閉じる音が響く。それを耳にして、まずは夏輝さんが追って外へ行った。
「あの……私も、様子をみてきます」
次いで少し俺の方を気にかけるようにしながら、松川さんもその後を追う。
「行かないの?」
高坂さんは一人、悠然とワインを口にしながら、俺に聞いた。
それが、こちらを試すような口ぶりに思え、やや反感が生じた。ワインなんか飲ませるから、こんなことに――そう、責任転嫁したい気持ちもあった。