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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第7章 乱れる心、あの日の想い
俺は黙っていて、こんな時どう言えばいいのか、わからずにいた。「お願いします」なんて、言えない。さっきは自分から、あんなことを言ったくせして。
立ったままの俺を見かねたように、五月女さんは先に浴室へと消える。すぐにシャワーの音が耳に届き、すりガラスの向こうに身体を流す、そのシルエットを認める。
この間に脱衣場から出て行けば、よかったのだろう。そしたら、大人の五月女さんは何事もなかったように接してくれるはず。青い欲望を覗かせた、この気まずさを濯いでくれただろう。
葛藤して立ち尽くした後で、結局は服を脱いだ。そして、恐る恐ると浴室の扉を開く――と。
「!」
五月女さんは俺の姿を見ると、頭から浴びていたシャワーを止めた。濡れ髪をきゅっと手で搾り、左の肩口へと垂らす。
「どうぞ」
そして、臆面もなく入って来たこちらに対し、さも当然のようにバスチェアを勧めている。俺は腰に巻いたタオルを更に両手で押さえながら、言われるがままそこに座った。
「では、流します」
五月女さんは言って、温いシャワーを俺の身体に当てた。それから首筋から肩甲骨の辺り、肩、腕、わき腹や腰の辺りまでを、泡立てていく。
女の人に、背中を流される場面。俺はたまに読んでいた、やや性的なラノベの内容を思い出す。それは、どこまでも都合のよいストーリー。それでいて、直前では茶化されてしまう。
それ以上は妄想して、と言われたようで、少ししらけたものだった。それならば、純文学のさり気なく、それでいて唐突な性表現の方が、なんとも艶めかしくて好ましかった。
だが、これは俺自身の現実(リアル)。どこまでも淡々とした所作の五月女さんは、ラノベのヒロインのように、これ見よがしではない。にも拘わらず、二人は裸だ。