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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
そんな状況に際して彼女が手を打たなかったのは、当時の俺との関係が良好ではなかったせいだ。あの十六歳の誕生日の一件から、それは着実に崩れていった。表面上、五月女さんにどんなに満たされたとしても、施されるばかりでは虚しいだけだったから。
所詮は、大人と子供の関係。あらゆる意味で、俺が最低のガキだったということには違いない。その上、金だけはあるのだから始末に悪すぎた。
そして、事件はそんな状況の中で、起きてしまう。あれは――
「――おーい!」
……ん?
声がする。ドアが叩かれる音も。
「お・に・い・さぁん! あ・さ・で・す・よ・おー!」
ドアに張りついて響かせたような、こもった声。この喋り方は、夏輝さん……?
そう認識して、俺はようやくベッドから身体を起こした。どうやら、寝る前に回想した過去の一部が尾を引き、夢の中でも続けられていたようだ。
よくない思い出を振り払おうと、頭を振る。目覚めの方も、当然よくない。
「もう! 起きないなら――」
「起きた! 今、起きたから!」
ドアが開かれそうな気配を察して、慌てて声をかけるが。
「――失礼いたしまーす!」
と、夏輝木葉はドアを開けて室内に押し入ってきた。点けっぱなしだたった照明に目を細めた俺の顔を見て、悪びれた様子もなく彼女は笑った。