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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
ワゴン車で林道を下りながら、助手席で俯く彼女に聞いた。
「とりあえず、どこへ行こうか?」
それはこの場合、適切な問いであるはずだ。それなのに口にした直後、俺はギクリとする。それは「この前の、ホテルへ」と、そんな返答が返ってきたらと、危惧したわけであるが。
「……」
松川土埜は、その問いに答えをくれることなく、相変わらず俯いたままだった。仕方なく、少し間を置いてから言う。
「ランチには、まだ早いし……うーん、そうだなぁ。松川さんって、趣味とか好きなことってなに?」
またしても、彼女がポツリと「セックスです」と言ったような気がして、焦る。だけど、それも勝手な空耳だ。
「……」
彼女は、依然として黙ったまま。膝に置いた両手が、スカートの裾を僅かにきゅっと握り締めたようだった。
もしや、俺はこの場で襲われてしまうのではないか。彼女の無言が、そんな緊張感を車内という密室に漂わせている。
この前、見知らぬ〝オジサン〟の元から彼女を連れ戻した後、いきなり唇を重ねられたことを思えば、強ち大袈裟な予見とも言えない。