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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち


 身体の快楽で気持ちを誤魔化すことに、この先も私は躊躇しないのだろう。火がついたら、自分でも止められない。けれど心の通わない行為に、虚しさは感じるべきだ。そして傷を負った時には、正しく痛みが伴わなければ嘘だ。

 今、私は涙を零しながら、お兄さんを見つめる。お兄さんは困ったように、憐れな私にかける言葉を探しているようだった。

 だから、私は言う。

「なにも、言わないでください。いいんです……今は、なにも」

 言いながら、泣きながら、お兄さんに抱きつきたくて、私は堪らない。今すぐにでも、二人きりに、この前のホテルへ行って、身体の中の真っ黒な部分から湧き出す欲望のままに、淫らに乱れてみたい。でも、今は耐えよう。

「ま、……つっちー?」

 私の無理を聞き入れて、親しげに呼称してくれたお兄さんのためにも。そして、そんなお兄さんに惹かれはじめていることも、ちゃんと認めてみよう。快楽の中で、すべての感情を上書きしてしまうのは、もう終わりにしたかった。

 せめて、正しく好きになり、正しく嫌われ、正しく虚しくなろう。


     △     △


 昨夜はあまり眠れずに、朝早くからベッドから起き出していた。二階のシャワーを借りて、なるべく身体に熱を持たせないように、ギリギリお湯と呼べる温度の水流で身体を流した。

 その後で部屋に戻り、カーテンを少し開け朝の光を入れると、隣のベッドの枕元を照らすスタンドを消した。この別荘でのルームメイト、夏輝木葉ちゃんは真っ暗だと眠れないという。

 自分のベッドに腰掛けて、窓の外の野鳥のさえずりに耳を傾けていると、隣のベッドでは木葉ちゃんが、もぞもぞと寝返りを打った。

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