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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
キッチンでは、めまいを起こした彼女を咄嗟に抱きしめた。でも今は明らかに彼女から、そうされていることに戸惑う。どう考えても「肌寒い」だけの理由では、不足していた。
「ひとつ、お伺いしてもいいですか?」
「別に、いいけど」
「お兄さんは……瑞月ちゃんのことが、お好きなのでしょうか?」
「いやっ……だって、兄妹だよ」
「それでは、他に好きな人はいますか?」
「今は……いない」
「……」
その時の沈黙が、なにを意味したのかはわからない。しかし暫くすると、松川土埜は俺から身体を離した。
「ごめんなさい……私も少し、酔ってしまっているのかもしれません」
「ああ……そう、だよね」
彼女だけはアルコールを、ほとんど口にしていなかったような気はしている。だが、あえて俺は話を合わせて頷いていた。
「では、また」
胸の前で控えめに手を振る松川土埜は、彼女らしく控えめな笑顔を浮かべる。
「ああ、また」
その笑顔に後ろ髪を引かれるようにしながら、俺は瑞月たちを探しに向かった。