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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
今回の旅ではじめて話した高坂文水さんは、派手だと感じた第一印象に比べ、今では随分と柔らかなイメージだった。ショートパンツとタンクトップの露出の高いルームウェアも、むしろ彼女らしくシンプルで飾らない人柄にマッチして思える。
さり気ない気遣いができ、それでいて気さくな一面も有している。素敵な人だと感じた。
「ところでさ。そっちこそ、朝からなんの相談?」
「え、いえ――」
答えあぐねた私に代わり、木葉ちゃんが答えた。
「えへへ、内緒話でーす」
「へえ、面白そう。私も少し混ぜてよ」
「ええ、文水さんはちょっとなぁ……」
「うわー、ひっどい。夏輝ちゃんって、そういう意地悪するわけ」
「ああ、それ! 気になってたんですが、その夏輝ちゃんって呼び方なんとかなりません? 私の場合、そっちも下の名前みたいになっちゃうので、できれば『木葉』で統一してほしいです」
「面倒くさ……どうでもいいでしょう、呼び方なんて」
「よくありませんよー。呼び方一つで親密度が全然違うんです。あ、そうそう。そう言えば、お兄さんもその辺り、妙に硬くないですか? 私なんて、いまだに『夏輝さん』だし」
「私だって『松川さん』だよ」
「私も『高坂さん』。まあ、こっちも『管理人さん』とかだけど」
「文水さんは年上なので、私たちみたいに『お兄さん』呼びはできませんしねー」
「悪かったね、一人だけ年上で。どの道、そんな風に媚びたような真似はしないけど」
暫くは三人で、お兄さんの話題中心に話していた。すると、木葉ちゃんが突然こんなことを言い出すのだった。
「そうだ! 今日のデートで『土埜』って呼んでもらえるように、お願いしてみなよ」
「フフ、いいかも。やってみたら、それもいきなり第一声でさ」
「アハ! どんな反応するか楽しみー!」
「『は?』とか、なりそうだけど」