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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
ドキリと心音が跳ね上がる。名前を呼ばれたことだけではない。彼女の瞳の中に、俺への信頼が見て取れたような気がして、そんな想いに心が震えたのかもしれない。
「だから、今みたいな時は、どうか……私のこと、叱ってくださいませんか?」
「あ、ああ……」
頷いてみたものの、戸惑いだけが大きく心に広がっていくようだった。彼女が彼女なりに変わろうとしている気持ちは、伝わってくる。だけどそれだけに、そんな彼女に対し自分がどう接していいのか、それがわからなかった。自分の中ですら、答えが出せないでいるのに。
「嬉しいです」
只、独り言のように小声で言って柔らかく微笑むその姿が異様なくらい愛おしく思えて。俺は彼女のことを、今すぐにでも抱きしめたくなるのだ。心を激しく揺さぶられながら、松川土埜とのデートの一日は続いていくのである。
牧場の近くのレストランで昼食を食べることにする。昔ながらの洋食屋といった雰囲気のこじんまりとした店だ。
俺はランチメニューにあるポークソテーを頼み、彼女はオムライスを注文。昨今のふわとろといったタイプではなく、卵でしっかりとチキンライスを包み込んだもの。特に調べて入ったわけではなかったけれど、料理の味はどれも美味しかった。
食後になんとなく夏樹木葉の話題になり、最初はその特有のキャラについてのプチなエピソードの数々に、「ハハ、それは夏樹さんらしいな」などど、もちろん決してバカにするわけでもなく、楽しく聞いていたのだけど。
「つっちー、どうかした?」
不意につっちーが、真剣な顔に変わったことに気づいた。
「いえ、あの……ひとつだけ、聞いてもいいですか?」
「もちろん、いいけど……?」
改まって、なにを聞く気だろう。そんな風に思っていると。
「涼一さんは……木葉ちゃんのこと、どう思いますか?」
「どうって……明るくて楽しくて、ちょっとトラブルメーカーなところとか。さっきまで、つっちーから聞いてたイメージのまんまだけど」
「そ、そういう意味ではなくて……」
「じゃあ?」
「女の子としては、どうでしょうか?」
「……!」