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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第8章 土埜の気持ち
女の子として。そうまで言われては、流石に素知らぬ顔をしているわけにもいかないだろう。俺の中にある、後ろめたさに似た感覚が呼び覚まされてくる。
明るく楽しく、というのは夏樹木葉の一面。それが〝表の顔〟であると言い切れるほど、彼女の真相に迫っているわけではないが、彼女が天真な笑顔の裏に、なにかを秘めているのは間違いないこと。
そして俺は、別荘に四人を迎えた初日の夜に、夏樹木葉と……。まるで実感がないから、彼女をネタに話している時は、その件について頭の片隅にもなかった。
「夏樹さんから、なにか聞いた?」
「いえ……やっぱり、いいんです」
彼女は慌てて先の質問を取り下げると、俯き申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい……私が、気にするようなことじゃないのに」
「つっちー?」
「どうか、気にしないでください。その代わりに――」
彼女の前に置かれたアイスコーヒーのグラスの中で、氷がカランと音を立てる。それをきっかけとするように。
「――少しだけ、私の話をさせてください」
つっちーは、大きな漆黒の瞳をこちらに向けると。
「この心を覆う闇と……それを振り払うために、繰り返した過ちの話……です」
俺を前に、静かに語り始めるのだった。